大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)3324号 判決

被告人 中西裕

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点及び第二点について。

強姦致傷罪は、強姦の既遂又は未遂行為に原因し他人に傷害の結果を生ぜしめた場合に成立するものであつて、その傷害の結果は姦淫行為自体により又はその手段たる暴行脅迫に原因して生じた場合は勿論犯人が強姦の機会において強姦の目的達成を確実ならしめるため同一の意思発動に基いてなした暴行、脅迫により生じた場合をも包含するものと解する。尤も強姦行為完了後別個独立の意思発動により被害者を傷けたときは、その傷害行為は単純な傷害罪を構成するに過ぎないことは所論のとおりである。しかして記録によれば、被告人は原判示(一)記載の如く被害者A子を判示土堤下に押倒して強いて姦淫し更に土堤斜面に押えつけて強姦したが、その際に女が救助を求めて叫んだためその抵抗を抑圧するため同女の顏面を殴打しよつて同判示の如き傷害を与えた事実を認めることができる。(原判決は右姦淫遂行中と判示したのは強ち所論の如く姦淫の実行行為の遂行中にのみ限局した趣旨ではなく、被告人が強姦の目的達成を確実ならしめるためその機会においてとの趣旨であることは証拠と対比して明らかであるから、右の如く認定判示したとしても、原判決には所論の如き事実の誤認はない。)しからば被告人の加えた右の傷害は被告人が強姦の機会において前同一意思の発動に基いてなした暴行に原因して生じたものであることは明らかであるというべく、所論の如く強姦行為完了後別個の独立した意思の発動によつてなされたものであるということはできない。記録を精査するも右認定を覆し所論の事実を認めるに難い。しからば原判決が被告人の判示所為を強姦致傷罪に問擬したのは正当であつて、何等所論のような理由不備、事実誤認乃至法令適用の過誤はなく論旨はいずれも理由がない。

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